お葬式の知識やマナー、宗派や喪主のこと、そして終活など、
知っておくべき情報をお届けします。ぜひ活用ください。
2023年1月31日
故人との最後のお別れである「出棺」に関する知識やマナーを解説
出棺は、葬儀や告別式での焼香やお別れの挨拶などの後に、故人様を火葬場へ見送るための大切な儀式です。
このページでは、出棺に関する概要や、出棺時とその前後の流れとマナーについて解説します。
出棺の意味や手順
葬儀にも宗教や地域ごとに異なる手順や意味が存在するように、出棺(しゅっかん)にも宗教や地域ごとに異なる手順や意味が存在します。
さまざまな地域や宗教での出棺に関する意味や手順、その際のマナーについて解説します。
「出棺」とは故人を火葬場まで送り出すこと
冒頭で述べたように、出棺とは故人様を葬儀場から火葬場へ送り出すことを指します。
一般的に火葬場まで同行が可能な方は、遺族や生前に故人様と関係が深く遺族から同行を許可された方のみが参列可能です。そのため、多くの会葬者にとって出棺が肉体を持った故人様の姿と過ごせる最後の機会といえるでしょう。
日本の葬儀では出棺前に「別れ花」と「釘打ち」と、2つの手順が存在します。しかし、「釘打ち」については宗派、地域、遺族の意向などによって省略されることもあります。
棺に花や故人が生前愛用した物を納める「別れ花」
別れ花とは、棺にお花や副葬品を手向けることを指します。故人様と近い関係性の方から順番に手向けることが基本です。
使用するお花は、葬儀で使用したものや葬儀会社が用意したお花を使用することが一般的ですが、最近では故人様が生前に好きだったお花を使用することや、宗派によっても使用するお花が異なります。避けた方がよいとされているお花もあるため、葬儀会社に確認することがおすすめです。
副葬品については、故人様が生前に大切にされていた品物のことを指します。
入れてもよいとされているものは、可燃物が基本です。金属やガラスなどの燃えにくい品物や爆発の可能性があるものは避けましょう。また、存命の方が写っている写真も避けた方が良いとされています。
棺の蓋を閉じる際に行う「釘打ち」
釘打ちとは、別れ花の儀が終了後、棺に蓋をし釘を打ち込むことを指します。棺の四辺を葬儀会社のスタッフが途中まで釘を入れ、その後、喪主を含めて故人様と近い関係性の方から順番に2回ずつ打ち込んでいくことが基本です。
釘を打ち込む際の道具として、三途の川の石に由来して石を使用していましたが、現代では金槌を使用することが一般的になっています。
釘打ちは、しなくてはならない儀式ではなく遺族が選択できる儀式です。
遺体を保存する技術に乏しかった時代は、腐敗によって発生する伝染病を危惧する衛生面の問題や「死は穢れ」といった縁起の悪いものとされる風潮がありました。そのため、釘打ちは必要とされてきましたが、保存する技術が高まった現代では衛生面を危惧することがなくなりました。
遺体に対する意識も変化したことから、釘打ちを行うことは少なくなっています。
霊柩車までの棺の運搬は遺族の手で行う
別れ花、釘打ちの儀式後、出棺へと移ります。遺族や故人様と親交の深かった会葬者が棺を霊柩車へと運びます。
棺自体の重さは20kg程度です。遺体や副葬品なども合わさると100kg以上になることもあるため、落下事故防止として運搬には最低でも男性が6名以上で行います。
男性が少ない場合は葬儀会社のスタッフと一緒に運ぶことになるでしょう。その際、棺の向きは足側が前です。
出棺前に参列者への挨拶を行う
棺を霊柩車へのせたら、遺族は火葬場まで同行します。会葬者とはその場で別れることになるため、喪主または遺族の代表が別れの挨拶を行います。
挨拶の内容は、会葬者へのお礼・故人様との親交に対する感謝・故人様との思い出・今後の親交や支援に対するお願いなどが一般です。
挨拶をする際には、遺族が故人様の位牌や遺影を会葬者へ見えるように持ちます。挨拶の内容は紙に書いて用意しておくことも可能です。
流暢ではなくてもよいので、自分の言葉で心をこめて伝えることが大切です。挨拶が終わったあと、霊柩車で火葬場へと出棺されます。
火葬場までのさまざまな移動方法
会葬者への挨拶後、霊柩車で故人様を火葬場まで送ります。
霊柩車に乗れる乗員は運転手以外におおよそ1名及び2名です。大抵の場合は、霊柩車には喪主が同乗するため、霊柩車に乗れなかった場合は他の移動手段で火葬場まで行くことになるでしょう。
火葬場まで移動する手段は幾つかあるため、以下で解説します。
費用が掛からず手軽に移動可能な自家用車
自動車免許と自家用車を所持している場合は、自家用車での移動がおすすめです。マイクロバスやタクシーを手配することに比べて費用が抑えられます。
火葬場までは霊柩車を先頭にし、後ろを随行することで道に迷う心配はありません。ただし、信号待ちで霊柩車と離れてしまい見失うことを考えて、事前にカーナビを使用し火葬場までのルートを表示しておくと良いでしょう。
近年では、コロナの影響によって人が密集することを避ける方も多く、火葬場までの移動には自家用車を使用する方も増えています。
車の色や形に指定はありませんが、過度に派手なものは避けた方が無難です。
費用は掛かるが大勢が乗り込めるマイクロバスやジャンボタクシー
火葬場まで同行する人数が多い場合は、マイクロバスやジャンボタクシーがおすすめです。
マイクロバスは貸切バスの一種であり、およそ20名ほどが搭乗できます。設備によって搭乗できる人数も変わりますが、大型や中型のバスを手配するより費用を抑えられます。料金相場は3〜6万円です。
一方、ジャンボタクシーは10名ほどが搭乗できる大型のタクシーです。通常のタクシーと同様に、かかる料金は移動した距離に比例します。
移動距離が長い場合はマイクロバスを使用した方が費用を抑えられることもあるため、人数や距離に応じて手配することが良いでしょう。
昔とは変わりつつある近年の出棺
冠婚葬祭は、その時代ごとの特徴が反映され、さまざまな形へと変化しました。
近年では、規模の大きい葬儀ではなく、なるべく遺族に負担がかからないように小規模化することが増えています。
その背景には、不況やコロナの影響、価値観の多様化が要因のうちです。故人様の親族を中心に、ごく親しい友人のみで行うことから「家族葬」と呼ばれています。
殆ど無くなった出棺時のクラクション
出棺時に霊柩車がクラクションを鳴らす場面をご存じでしょうか。
最近では見かける機会も少なくなってきましたが、以前は出棺時にクラクションを鳴らすことが殆どでした。故人様を弔う意味として行われているもので、さまざまな諸説があります。
楽器や一番鶏の鳴き声の代わりなど「道中の邪を払うもの」とされています。
近年では、クラクションの音が大きく近隣に迷惑がかかることを気にされる遺族が増え、クラクションを一瞬だけ鳴らす、或いは一切鳴らさずに火葬場へと出発することが大半です。
自分の車で故人を家から火葬場まで運ぶ場合も
故人様を火葬場まで運ぶ際には、自家用車も使用できます。
霊柩車を手配しない分、費用を抑えることが可能です。
業務として遺体を運ぶのでない場合は法律違反になりません。事前に警察への届出も不要です。ただし、死亡診断書や故人様の身分証明書は携帯しておくことが望まれます。
遺体の運搬には、棺を乗せるための大きい車や遺体の管理に対して専門的な知識を持っていないと、さまざまなリスクを伴うため業者に依頼することが良いでしょう。
地域ごとに異なる出棺のやり方
前述した通り、葬儀には地域ごとの特徴も反映されます。
ここでは出棺の際に一般の葬儀とは異なる方法で行われるものをいくつかご紹介します。
頭に布を被る宮城県の葬儀
宮城県の一部地域では出棺の際に、天冠を身につける風習があります。
天冠とは、故人様がお額につけている白い布のことです。会葬者の男性は白い三角の布をつけ、女性は白い頭巾をかぶります。
白い衣装を身につけ故人様と同じ格好をすることで「故人様のことを最後まで見送る」といった意味があり、出棺後にすぐ外す理由には「他の人を連れて行かないでほしい」といった思いが由来です。
竹で作った門を通る栃木県の葬儀
栃木県の農村部では自宅から出棺する際、玄関先に竹で作った簡易的な門を建てます。これを仮門(かりもん)と言い、この仮門をくぐって出棺する風習があります。
普段使用している門を魂の出入り口にしないといった意味があり、出棺後すぐに仮門を壊すことで他界との境界線を壊し、故人様が再び戻ってこないようにといった思いが由来です。
棺を3度回す山梨県の葬儀
山梨県大月市では出棺の際に、棺を3回回す棺回しと呼ばれる風習があります。呼び方は他にもあり、3回回すことから3回回しとも呼ばれています。
棺を回転させる理由は、故人様が再び戻ってこないようにするためです。棺を回転させることで方向感覚を失うとして、この儀式が行われるようになりました。
まとめ
出棺は、肉体を持った故人様と過ごせる最後の機会です。それぞれの宗教や地域によって出棺時のマナーや内容の違いはありますが、どれも故人様を偲ぶ気持ちのもと行われる大切な儀式です。